誤解と氷解,それはほんのすれ違い

  • 2019.01.14 Monday
  • 11:15

JUGEMテーマ:大袈裟だが,地獄から天国へ行った気持ちだ。

 今日は成人の日,新成人が誰しも,不安と期待に胸膨らませる,旅立ちの時だ。その日に向けて,反面教師にしてもらいたく,今回は,少しばかり長文の,自分の半生を顧みての反省の弁を記事としたい。

 誰しもが,ちょっとした出来事で移ろう気持ちと,日々寄り添いながら生きていることだろう。だから,人間の気持ちとは,不変でないことが,普遍であると言っていいのではないのか。「そんな当たり前のことを」って,言われてしまうかも知れないが,その当たり前と思えることで,どれだけ,人が場合によっては瀬戸際まで追い詰められ,はたまた燦々と愛に包まれるごとく,人間の心を大きく左右していることか,そう思う自分である。それゆえ,この移ろいやすい心の持ち主である人間は,如何に脆く弱い存在であるのかが,自分の胸に手を当ててみると,その指先ひとつひとつからも伝わって来る。少なくても,自分自身は,まさに,そんな人間であることを自覚してはいるから。それに,普段,強靭な心の持ち主に思われる人が,「え〜ど〜して〜」っていうような,弱気な行動に出たりすることを,何度も経験して来た自分には,やはり,この気持ちの移ろいやすさというのは,誰とも言わず普遍的なものであると感じられるところだ。そういう心弱き存在だからこそ,人間は,ひとりとして同じ顔を持たないこの雑踏の現代社会において,お互いに心触れ合う場を求め,手と手を取り合う友人や仲間として,心の傷を癒しながら生きていることになるのだろう。だって,心に刺さった尖ったものは,深く刺されば刺さる程,命を突き刺す危険さえ孕むのだから。そして,その人と人との心の触れ合いは,生きる上で必要ないろんなことを教えてくれる。例えば,絵画,文学,映画と,本当にいろんなことの学びの場がある。それは,生きる喜びであり,希望や夢とも繋がって来る,素晴らしいものだと自分は思う。思い起こせば自分の半生でも,様々な人達との貴重な宝物のような出逢いがあって学びもあった。それらは,全て今の自分の糧となって,体の内部に根付いているが,例え悲しい別れでも,全てが学びと捉えている。それでも,今なお心弱き持ち主の自分は,ちょっとした環境の変化にも対応できずに,あたふたしては落ち込むことが度々だ。かつて,太宰治の人間失格を読んだ中学時代,同級生等のいじめに苦しんでいた自分は,「こんな偉い人でも,こんな弱気なことを考えては,こんな一見退廃的で自伝的な小説を書いたりするんだ。」って,共鳴するような救いの気持ちを抱くと同時に,この小説が太宰が入水自殺を図った当時の作品であったことを知った時には,これまた共鳴するごとく,「こんなに毎日学校に行っていじめられるのなら,自分も死んだ方が楽な気がするな。」って,弱い自分は,何か苦痛のない方法でもって,死んでしまいたいとも正直思ったものだ。幸いにも,当時その他の条件が功を奏して,こうやって今を生きられている自分であるが,こんな年齢になってすら,いや,年齢に関係なく,いつ何らかの悪条件が重なれば,自分の弱き心はポキッと芯から折れては虚無感やら厭世観に捕われて,自分がその後どんな行動に出るのかすら自信が持てない不安も過る。

 近日,世界選手権やオリンピックで輝かしい成績を残し,不動のものとしてその功績とその名前を,女子日本レスリング界に刻み残した,霊長類最強女子とも称された吉田沙保里選手が,「全てやり尽くしました。」という言葉と共に,現役引退を表明した。その引退会見は,傍から見ても,何とも清々しさすら感じさせる,トップアスリートの最後の言葉に相応しい,立派なものであったが,その際に,一番印象に残った試合はという質問に対して,「リオでの銀メダル」って,きっぱり断言していたのも,彼女の人間性を現していて印象深かったし,その訳が,全ての人に通じる普遍性を持っているとも感じられたのが,ある意味で,自分の救いでもあった。それは何故かと言えば,普通だったら世界2位である銀メダルは,先ず持って誇らしいものであるし,その前に,一番の印象試合には,普通だったら,金メダルを獲得した試合のどれかを上げるのではないのかと思っていたのに,彼女は敢えて悔しさ残る銀メダルの試合を選択した理由で,「負けたことで,今まで如何に自分が多くの人達に支えられてやって来れたのかが,はっきり分かった。そして,敗者の気持ちがどんなに複雑なものであるのかも体感できて,その意味でも今後の成長のためになった。」と,そんな趣旨のことを述べていたからだ。彼女のような,レスリングという競技スポーツを極めた人ですら,誰もが覚えているように,負けた瞬間のあの時に,泣き崩れては支援してくれた人達への謝罪の言葉を先ずは口にし,「最強」女子が,その心が,決して最強ではではなく,あのように脆さをも兼ねているのだということを示してくれたことは,自分にとって,「やはり彼女もまた例外ではない,自分や他の人達と同じ脆く弱い心を持つ人間なのだ。」ということを,改めて思い知るいい機会となった。それゆえ,敗者や弱者への思いやりの心が生じるのだろう,そう確信する自分である。そうでなければ,本当の優しさを知ることはできないし,優しさを知ることで得る人との絆も生じないはずだ。この世の中を見回すと,自分の就いた地位や得た身分によって,一種天狗のようになって鼻高々な姿勢を示している人達が多く見受けられるが,尊敬する亡父がよく言っていた言葉に「実った稲穂は頭を垂れる。」というのがあるが,やはり,この謙虚な姿勢こそが,人の優しさの原点であり,そこから人々の融和にすら繋がるのではないか,そう思う自分である。

 そう言う自分も,その一番大切な謙虚な姿勢や思いやりの心に欠けていたことを,今年の始めになって思いもよらず,痛切に思い知らされることとなった。自分には,非はないとの頑固な気持ちが強かったのであろうか,新年の始めに家族の絆が全て瓦解しかねないところであった。そして,心弱きこの自分は,一時息ができない程の衝撃で,頭の中が何も考えられない程に真っ白になった。その直後には,本当にあやうく包丁でリストカットところであった。それくらいに,この新年最初の出来事は,自分の中の魂すら奪って抜け殻にし,全く生きる希望すら見出せない絶望を与えたも同然だった。それというのは,自分が,遠く離れた掛け替えのない息子に,新年の挨拶の電話をした時のことであった。何度電話しても繋がらないので,用事があれば電話しているという妻に事情を話して,電話に出てくれるように頼んだところ,やっとのことで息子と電話が通じたのだが,こちらで話しかけても何の返答もない。そこで母が代わって電話に出ると,母の様子からして,普通に二人で話をし始め,母が笑顔で新年の挨拶を交わした後に,「じゃ〜お父さんに代わるね。」と言って,受話器を自分に手渡した途端,こちらから「明けましておめでとう。今年もよろしくな。」と話しかけても,何ら返答が戻って来ない無言のままの状態が続いた。何度息子の名前を呼んでもだ。この状況を,妻に説明したら,「実は…」と言いながら,その訳を淡々と話し始めてくれた。要するに,ある理由でもって,自分とは一言も話をしたくないし,顔も見たくない程の,過去のトラウマを受け,毛嫌い的気持ちが相当に強いからだと,言っていた。それを聞いた自分は,「今まで,これ程までに子供達の成長を楽しみにして,日々仕事を頑張って来たのに…」と,まさに,一瞬で谷底に突き落とされた境遇になったのだ。死にたいと思った,瞬間的に,衝動的に,そして,時間と共に遂には体中の力が抜けて,炬燵の中にふにゃふにゃになった自分の姿があった。日が経つにつれ,今度は,一種の開き直りの気分になり,「自分には,最初から息子などいなかったんだ。」と,言い聞かせることにしている自分がいた。それでも,仕事帰りなどひとりになった時には,好きな音楽を聴いても心は踊らなかった。でも,冷静になり,振り返ってみると,確かに自分の行動には,嫌われても仕方がない部分が多々あったことを,自省せざるを得ないと思えて来たし,何をおいても,子供達二人を如何に深く愛しているのかを,どうしても息子に伝えたかった。父親として,当たり前のことを。それを,妻を通じて,間接的に息子に伝えてもらったら,予想だにせず幸運なことに,その翌日,息子の方から電話がかかってきた。そして,明るく晴れやかな声で「明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします…」と。これには,もう本当に泣きたくなる程,今度は嬉しさで息ができない程,胸が一杯になり,見えない何かに感謝した。その後は,夢中になってどんな話をしたのかすら覚えていないが,自分の胸中は,嬉しさで満たされて,大袈裟ではあるが,血の池地獄から天国にいきなり飛んで行った気がした。こんなふうに,息子は,「自分のことなど,お父さんは愛していない。」と,父としての自分は,「息子が,自分を特別嫌うはずがない。」と,お互いが思っていた誤解も,あたかも雪解けの春を迎えるごとく,氷解したことは,全くもって自分の心が感無量になった瞬間であり,これで今年も善い年であらんことを祈念するばかりの自分である。それにしても,お互いが,思ってもいないことで誤解をし,それでもって深くすれ違ってしまうこともあるのだと,その恐さをいつも自覚しなければならないことを,思い知らされた出来事だった。

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